EUR/USD: 米連邦準備制度理事会のFOMC 会合を控えて
- 先週、世界銀行は世界の主要中央銀行の金融引き締めやヨーロッパのエネルギー危機によって2023年に景気後退に陥るのリスクが高まっていると述べました。シティグループのストラテジストによると、投資家にとってドルは投資ポートフォリオのドローダウンに対する唯一の非難場所です。
世界の株式市場は2022年の年明けから23兆ドルも下がり、債券価格も下落しています。米ドルについては、株式やほかのリスク資産と異なり、上昇を続けています。アナリスト予想では、DXYドル指数は、今後三ヵ月で112.00 ポイントに迫り、20年ぶりの高値更新となると言われています。米国経済がほかの国や地域の経済よりも迫り来る景気後退に上手く対処していくだろうといった投資家の考えもドルを高くしています。
市場は、今、9月21日(水)に開かれる米連邦準備制度理事会の次回のFOMC会合に注目しています。現段階における中央銀行の金融政策を決定する主なパラメーターは、インフレ率と労働市場の状況です。先週は、米国の小売売上高と失業保険申請件数などの重要な統計発表がありました。このデーターがFRBの金融引き締め策(QT)が続くとした投資家の見方を強めました。CMEグループによると、75ベーシスポイント(bp)の再度利上げの確率が74%、100bpsでは26%と推測されています。ウェルズ・ファーゴのアナリストは、利上げに加え、バランスシートの縮小が早まるとした見方をしています。
中立的な金利に対するFRBの予想もこの会合で更新されます。2022年フェデラルファンドレートに関する予想中央値では6月時点の3.375%から3.875%に修正される見通しです。
上記のステップのすべてから、さらなるドル高と株式市場の下落へとつながる可能性があります。逆のシナリオは、発表されていたプランが急に破棄された場合の時だけです。しかし、これはGDPの急激な減少、失業率の上昇、インフレ率に対する説得力のある対処がある場合にだけ起こります。この3つのどちらも、今のところまだ、アメリカでは観測されていません。
9月13日に発表された消費者物価指数(CPI)は、先月の8.5% から 8.3%に下落しました。しかし、予想では、さらに低い 8.1%でした。また、コア・インフレ率は3月以来の高水準の前年比6.3% で、中央銀行の目標である2%の3倍以上にもなり、マイナス材料でした。ただ、対照的に労働市場は、かなり堅調で利上げ予想を支えています。この2ヶ月の新規雇用件数もかなり伸びており、平均で42万1000件でした。
ユーロ圏に関してはインフレ率が8月には9.1% に上昇しました。このことから、一部アナリストは、ECBも0.75% 増しの利上げを継続すると分析しています。しかし、規制当局の次回会合は、まだ、先の10月27日です。つまり、引き締め(QT)については海外勢から大きな遅れをとっています。その一方で、ラボバンクのストラテジストによると、不安定な地域情勢から “利上げが大幅なユーロ高にならないかもしれない” とのことです。米ドル高から、ストラテジストによればEUR/USD が来週には0.9500 に下落する可能性があります。
EUR/USD は1.0013で今週を終えました。このレビュー執筆時の9月16日(金)の夕方、アナリストの意見は次のとおりです。75% は、直近での下落継続、残り25%が ピボットポイント1.0000に沿った横ばいの継続を支持しています。強気筋支持は一票もありません。
D1のトレンド系インジケーターでは、65%が赤、35%が緑。オシレーター系では、25% が緑で、同数の25% が赤、50%がニュートラルグレイ。
このペアは、4週間、パリティラインに沿った推移をしています。取引幅は0.9900-1.0050でした。両方向のブレイクダウンを考慮した場合、やや広くなります: 0.9863-1.0197。0.9860の後の次の強力なサポートは0.9685前後で、上記で述べたとおり、弱気筋のターゲットは0.9500です。レジスタンスと強気筋の目標は次のとおり: 1.0050、1.0080、1.0130、そして 1.0200 と1.0254で次のターゲットの範囲が 1.0370-1.0470です。
FOMC(連邦公開市場委員会)の会合とその後の予想やコメントに加えて、来週は米国内の新たな失業データーの発表があります。これは、9月23日(木)です。また、ドイツとユーロ圏全体としての購買担当者指数 (PMI) が週終わりの9月23日(金)にあります。
GBP/USD: イングランド銀行の会合を控えて
- イギリス通貨がまた、記録を破りました。週明けに1.1737 に上昇したGBP/USD は、その後、急落でした。水曜日に小休止した後、下落が続きました。9月16日(金)は1.1350 で終わりました。このペアのこの低水準は37 年前の1985年です。今週の取引終了の鐘は75 ポイント高くなった1.1425で鳴りました。
FRB の利上げ期待によるドル高はさておき、イギリスの小売売上高が落ち込みイギリス通貨に圧力をかけました。8月の小売売上高は前月比1.6%減で、0.5%予想の3倍以上です。
アナリストによると、強いテクニカル調整で暴落は防げるとのことです。そして、それは束の間の間だけです。MUFG銀行のストラテジストによると、GBP/USD の下落トレンドは史上安値の1.0520まで続くかもしれないそうです。“イギリスの予算と現在の経常収支を合わせるとGDPが驚異的な15% になり、GBPの下落圧力は続くだろう”と記述しています。
イングランド銀行もFOMC 会合の翌日の9 月 22 日(金)に金利決定の発表をします。大方の予想では、50 bp引き上げで1.75% から2.25%です。しかし、規制当局が一気に2.50%引き上げて、しばらくポンドを支える可能性もあります。
しかし、これは両刃の剣です。利上げ予想が現実となれば、既に深刻な懸念の状態であるイギリス経済には、さらなる大きな痛手となるでしょう。前回、記述しましたが、英国商業会議所(BCC)の予測では、イギリスは既に景気後退の真っ只中で今年にはインフレ率が14%になるとしています。そして、ゴールドマン・サックスによれば、2023年末には22%になり、長引く景気後退と3.5%以上の経済縮小をもたらします。英ガス電力市場監督局のOfgem は、既にイギリス世帯の平均年間電気料金が10月から80%値上がりすると発表しています。また、フィナンシャル・タイムズ紙によると、燃料不足の世帯は1月に2倍以上の1200万世帯になるとのことです。
FRBとイングランド銀行の会合に先立ち、来週の平均的な見通しは中立のようです。三分の一はドル、三分の一がポンド、残りの三分の一が中立の立場を支持しています。D1のインジケーターでも、ほとんどが赤です。 トレンド系では100%。オシレーター系では 85% が下向きで、15% が横向きです。オシレーター系で上向きはありません。
強気筋に関しては、1.1475、1.1535、1.1600、1.1650、1.1710-1.1740、1.1800、1.1865-1.1900、1.2000でレジスタンスに直面するでしょう。直近のサポートは、1.1400-1.1415で9月16日の安値1.1350が次に控えています。ボラティリティが大きくなっていることから、このペアのさらなる下落の程度については推測しかできません。1985年の最安値1.0520だけは繰り返すことになるでしょう。
来週のイベントについては、イングランド銀行の会合を除けば、9月23日(金)にイギリスの購買担当者指数(PMI) の発表があります。なお、9月19日(月)はイギリス国内の銀行休業日であることも注意してください。
USD/JPY: 日本銀行の会合を控えて
- FRB とイングランド銀行の会合に加え、来週は日本銀行(BOJ)の会合もあります。予想では、日銀は超金融緩和政策を継続し、マイナス金利(-0.1%)を据え置くとされています。
もちろん、信じられないことが起こるかもしれませんが、その可能性はほぼ0です。その一方で、ソシエテ ジェネラルのエコノミスト は、円安を食い止めることは日銀の対応だけで十分だといいます。しかし、USD/JPY の下落トレンドに反転させるには十分ではないでしょう。ソシエテ ジェネラルは、米国債の利回りを下落させる米国の景気後退も前提条件であると述べています。
USD/JPY の先週の取引終了は142.90で145.00の高値にはなりませんでした。しかし、バンク・オブ・アメリカのアナリストによると、このペアの強気感情は残っており、150.00への推移に向かおうとしたままです。その一方で、アナリストは次の3つのレベルに注目しています: Fibo 38.2% 調整(ヘッド&ショルダー) で145.18 、1999年の高値147.00、 A=C のターゲットである149.53。
このペアの直近のレジスタンスは、ちょうど一週間前の143.75。強気筋のタスクNo. 1は、 145.00を上回った足固めです。春に振り返って、このペアの利上げ分析した時は、9月に150.00になる可能性があると予想しました。そして、これはFRBの利上げの状況で実現するかもしれません。このペアのサポートは、142.00-142.20、140.60、140.00、138.35-139.05、137.50、 135.60-136.00、134.40、132.80、131.70。
バンク・オブ・アメリカのアナリストの意見は、65%のアナリストから支持されており、25% が反対の意見で、残り10%が中立のままです。 D1のオシレーター系では、100%が緑ですが、このうち10% は買われ過ぎを示しています。トレンド系インジケーターでは、75% が緑、25% が赤。
日銀の会合を除けば、今週は、日本経済の重要なマクロデーターの発表はありません。また、トレーダーは、9月19日(月)と23日(金)が日本の休日であることに注意しておきましょう。
暗号資産: 統合の後のETH: 上昇に代わり下落
- いつもは、メインの暗号資産であるビットコインからレビューをはじめています。しかし、今回は、いつもと違って、メインのアルトコインであるイーサリアムから見ていきましょう。2022年の暗号業界にとって最も重要な出来事かもしれないからです。9月15日、ETHネットワークは、アルトコインのProof-of-WorkプロトコルからProof-of-Stake(PoS)への移行を含むグローバルなアップデートを完了しました。これは、ブロックチェーンのセキュリティをマイナーではなく、バリデーターが検証することを意味します:ユーザーがコインを保有して動かせない状態にして 報酬を得ること(ステーキング)。
これからは、コンピューターの大規模なネットワークの代わりにバリデーターが取引検証や新たなトークンのマイニングのためにイーサリアムのキャッシュを使用することになります。これにより、ネットワークのスピードと効率が向上するのでより多くの取引を処理できるようになり、ユーザー増加の問題が解消されます。デベロッパーは、このアップデートで暗号通貨取引所、融資会社、ノンプレイヤブルトークン(NFT)市場、その他のアプリケーションのエコシステムをホストするネットワークが、より安全で拡張できると主張しています。また、暗号資産は莫大なエネルギー消費についても批判され続けていました。今後、イーサリアムは、その消費量を99.9%削減することになります。
愛好家は、この統合が業界に革命を起こしてイーサリアムが資金や価値においてビットコインを追い抜くと信じています。しかし、多くの見識者の声はかなり落ち着いています。例えば、バンク・オブ・アメリカ (BofA) は、今回のハードフォークで拡張や高額な手数料の問題の解決とはならないが、より幅広い機関への導入につながるかもしれないとしています。統合の後の消費電量の素晴らしい削減で、はじめてアルトコインを購入するという投資家もでてくるでしょう。“バリデーターとして、またはステーキングを通じたETHの性能やより質の高いリターン (信用と流動性リスクの低下) も機関の採用誘因となります” とBofA は認めています。
CoinSharesの最高戦略責任者であるメルテム・デミラーズ氏は、より悲観的な見方です。同氏は、投資家が統合の大きな宣伝で市場全体の状況を無視していると考えています。この出来事が巨額の資金を惹きつけるかは定かではありません: “現実は、もっと平凡です”と CoinShares のストラテジストは述べています。“グローバルなレベルでは、投資家はレートやマクロ指標を懸念しています。なお、私は、巨額資金がETHに流入される可能性は低いと思います”。
時が統合による市場の反応を最終的には教えてくれるでしょう。その一方で、上昇に代わって、下落しています。きっかけは、米国の8月のインフレ率データーによる株価指数 (S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダック)です。市場関係者は、このような状況にFRBがより金融引き締め策の強化と利上げを実施するであろうと判断しました。来週は、さらに0.75%、あるいは1.0%の利上げがあると予想されています。それを受けてドルが急騰をはじめる一方で、ビットコインやイーサリアムを含むリスク資産が下落しました。BTC は、金曜日の夕方までに$19,341に 下落、一週間で15%の値下がり、 ETH は$1,403に下落で20%の“減少”でした。
多くのアナリストによれば、FRBとECBのタカ派的立場により、暗号資産市場の推移は少なくても年末まではネガティブな状態のままになります。市場のリスク選好が減少の状態では、ビットコインが心理的重要なレベル$20,000の状態だけでなく、6月18日の安値$17,600を上回ることは難しいでしょう。後者をさらに下回る恐れもあります。
ニックネーム filbfilb のトレーダ兼アナリストはCointelegraph のインタビューでビットコインが現在のレベルから$10,000-11,000に下落すると答えています。アナリストによれば、ビットコインはFRBの政策に大きな圧力を受ける米国株式市場と強い相関関係にあります。ビットコインはインフレの保険としてではなくリスク資産として動きます
アナリストは今回迎える冬が欧州連合の住民や政治家にとっての大きな試練となり、その結果はホドラーに悪影響を及ぼすだろうと指摘しました。重要なことは、ヨーロッパ諸国がエネルギー危機にどうやって対応するかです。同氏によれば、すべては危機を防ぐことができる外交官の手にかかっているといいます。さもなければ、リスク資産は将来的に困難な状況に直面するでしょう。"ロシアとNATOの対談は重要です: 早く始めるほど、ビットコインの安値が高くなります"とfilbfilbは強調しました。
ここで注目したいのは、BTCの米国株式市場の依存度が8月に急激に弱まり、年安値を記録したことです。しかし、TradingView サービスによると、再び上昇をはじめて、ビットコインとS&P 500 インデックスの相関が0.59になっています。ナスダックとの状況も同じです。ナスダックでの相関は8月に0.31に下がり、9月には 0.62 に上昇しました。アナリストは暗号資産と株式市場の領域での依存は相関指数が0.5を上回ると強くなると気づかせてくれています。0.7 になれば、依存関係は理想的です。
ただ、マイナス感情にもかかわらず、トンネルの出口には光がまだ見えます。前述したfilbfilb は、ビットコインの2023年の第1四半期の急騰は"明らか"であると述べています。アナリストはこれには2つの理由があるといいます。一つは季節的な要因です。下落トレンドは半減期(来年のはじめ。の後、1000 日で終わります。次は、ゲーム理論に基づいたポジティブな感情への変化です。2/3の確率で、アナリストは、ヨーロッパはこの冬を乗り切ることができると示唆しています。しかし、事態が悪化すれば、短期的な安定をもたらすロシアとの対話の可能性が高くなります。
ニックネームRager という暗号資産アナリストは、BTCの $12,000への下落は考えていません。同氏はビットコインの取引には保証がないことに同意しています。しかし、同氏の意見では、$19,000以上で弱気市場の底の形成している可能性が高いとしています。 別のアナリストでニックネーム Rekt Capitalというトレーダーは、すべてがビットコインの下落の最終局面に向かった推移だと考えています。 “BTC弱気市場の多くを終わらせており、強気市場全般が先にあります。弱気市場の底は11月、12月、または2023年第1四半期のはじめでしょう”
Rekt Capital はBTC が200%の上昇を示すデーターがあるとしていますが、一つだけ注意があります: ビットコインは、上昇前にさらに下落します。“もちろん、短期的ですが、ビットコインの価格は5%-10%下落する可能性があります” Rekt Capital は記述しています。 “しかし、長期的には、かなり高い確率で200%以上の上昇の可能性があります”。
BTCの下落にもかかわらず、マイクロストラテジーの創設者、マイケル・セイラー氏は最善を望んでいます。同氏の企業は、この資産の取得を進めています。5億ドル相当の自社株を売却することが報じられています。この売却での収益は、とりわけ暗号資産の在庫の補充に充てられます。マイクロストラテジーはビットコインの保有企業として最大であることに注目してください。平均購入価格$30,664で129,699コインを保有しています。直近では6月に購入(480 BTC) しています。
執筆時(9月16日金曜日の夕方)、BTC/USD は$19,730 (ETH/USD - $1,435)で取引されているので、こちらのマイクロストラテジーはかなり採算がとれていません。暗号資産の時価総額は、心理的に重要なレベルである1兆ドルを再び下回り、0.959兆ドル(1週間前は1.042兆ドル)です。Crypto Fear & Greed インデックスは7日間で2ポイントさがった22から20 ポイントで非常に恐怖のゾーンのままです。
NordFX Analytical Group
注意: こちらの内容は金融市場への投資推奨やガイドラインではなく情報提供のみを目的としています。金融市場の取引には、リスクが伴うため入金した資金のすべてを失う可能性もあります。
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