2022年8月29日-9月2日のFXと暗号資産の予想

EUR/USD: また、世界経済が危機的状況

  • つまり、 EUR/USD が2016年につくった鍵となるサポートレベルを突破しました。8月23日(火)の安値は0.9899 でしたが、これは20年前の11月‐12月にこのペアが取引されていた安値です。ユーロは、この1年だけでもドル選好に対して485 前後を失っています。

    公ではありませんが、米国経済は既に景気後退に突入、GDP は減少していますが、推移は少し緩やかです: 2022年の第1四半期は-0.9%で第2四半期 は -0.6% 。FRBの量的引締め (QT) やマクロ経済要因がこのプロセスを強める機会を増やしています。つまり、JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEO は経済が"景気後退よりもさらに悪い"方向になると予想しており、その確率は、おそらく20-30%になります。

    ユーロ圏の状況はさらに悪化しており、マクロ経済の状況は良いとは言えないままです。予想では反ロシア制裁によるエネルギー危機で、ヨーロッパ、とくにドイツでは非常に厳しい冬に直面することになるでしょう。

    “世界経済は再び危機的状況” と世界銀行総裁のデービット・マルパス氏は発言しています。 “高いインフレ率と成長率の低さが同時に起きています。世界的な景気後退を回避したとしても景気後退の爪痕は続くことになるかもしれません” 。この状況が安全資産の需要を促し、米ドルは従来どおり、そのうちの一つとなります。ドルインデックス(DXY) は108ポイント前後の数年来の高値付近でポジションを維持、専門家によると110 ポイントまでの上昇が見込まれます。

    先週の主なイベントは8月25日‐29日にジャクソンホールで開催された毎年おこなわれる経済シンポジウムで米国のほぼすべての金融機関が集結します。シンポジウムでの大イベントは、パウエルFRB議長の講演であり、市場参加者たちは規制当局の将来の計画について発言を期待していました。しかし、目新しいものは何もなく、パウエル議長の声明が以前より少しだけ"タカ派" ではありましたが、概ね市場予想と一致していました。おそらく、米国中央銀行はどのような方向であれ、市場にショックを与えたくないのでしょう。議長は、FOMC(連邦公開市場委員会)による利上げに関する具体的な数字についてはふれませんでした。また、この決定は今後に控えている労働市場や消費者物価の推移に影響を及ぼすかもしれません。

    9月の利上げが50ベーシスポイント(bp)か、もしくは75bpなのかという確率は、同程度です。現在の金利は2.5%の水準で、次回の利上げでは2008年以来の最高水準になることについて思い出してみましょう。7月のCPIは8.5%で減速を示し、個人消費支出(PCE)のコア価格指数によるインフレ率は、1ヵ月で0.6% から0.1% へ下落していますが、間違いなくそのようになるでしょう。

    同時に、ECB でも9月8日の会合で借入コストを50bp引き上げる可能性があります。前回の7月会合の議事録では、大多数の理事会メンバーが主要金利を0.5%から1.0%に引き上げることが望ましいという意見で一致しています。また、ロイターによるとインフレ予想の悪化により一部からは0.75%の即時の利上げについての議論の要望があります。ただ、FRBとECBの金利差が縮まることでユーロを若干サポートするかもしれませんが、金利によるドル選好が続いたままなので根本的な状況に変化はないでしょう。つまり、ドル高は続き、ウェルズ・ファーゴのアナリストによれば、2022年第4四半期にピークを迎えるかもしれません。ノルデアのエコノミストは、EUR/USD は年末までに0.9700 に下落する可能性があるとしており、多くのアナリストも0.9600を挙げています。

    ジェローム・パウエル議長の講演は8月26日(金)の夕方で、アジアやヨーロッパ市場が既に閉まっている米国の取引時間中でした。そのため、FRB議長の発言に対する反応は8月29日(月)であることは明らかです。先週に関しては、多少のボラティリティはありましたが、週取引範囲での中央値よりやや下回る0.9966で取引終了の鐘が鳴りました。

    アナリストの60% は今後も下落は続くとしており、残りの40%は反対方向を支持しています。D1 のインジケーターでは、より明確です。トレンドインジケーター、オシレーターともに、100% が弱気です。しかし、オシレーターでは、4分の1が売られ過ぎを示しています。EUR/USD の弱気筋の直近のターゲットは7月14 日の安値0.9950 と8月23 日の安値0.9899です。0.9900-0.9930が強い2002年のサポート/レジスタンス範囲であることも注意してください。強気筋に関しては、1.0000のパリティレベルを超えて上昇することで、その後は、1.0030、そして、1.0090-1.0100、それから 1.0120、1.0150-1.0180、1.0200 、1.0250-1.0270のレジスタンスを克服しなければならないでしょう。

    米国の消費者市場に関する統計は8月30日(火)に発表予定です。同日の米国労働市場データーと並び8月31日(水)、9月1日(木)、9月2日(金)に失業率、非農業部門新規雇用者 (NFP)のような重要な指標が一通り揃います。ヨーロッパ経済については、8月31日(水)にドイツの失業率およびユーロ圏の消費者物価指数(CPI)、9月1日にはドイツの製造業購買担当者指数(PMI)と 小売売上高が公表されます。

GBP/USD: 非常に "厳しい長期見通し

  • GBP/USDの先週のレビューは “ポンドへの厳しい見通しが現実味を帯びてくる” という題でした。しかし、一部の専門家からは単に厳しいというだけでなく、現実に恐怖を引き起こすものだとされています。 “このペアの長期的なチャート” では、“今、本当に厳しい状況にみえます。継続パターンとして大きなダブルトップが表示されており、価格がパリティやそれを下回ること意味しています。[…] 1985年の主な安値まで今のところ十分なサポートはありません(2020年3月の1.14をわずかに上回る安値まで)[…] もし、今月1.1760下回る終値があるとしたら、弱気な月となるでしょう” という見方をシティバンクのエコノミストはしています。

    GBP/USD は先週、1.1736で終えました。ポンドには、セックススキャンダルに伴うボリス・ジョンソン首相の辞任やインフレ率が上昇していることで圧力が続いています。イギリスのエネルギー市場監督局のOfgemは一般世帯の年間電力料金は10月から80% 値上がると発表しており、新たな首相はこうした価格高騰に緊急に対応する必要があるとしています。

    来週の平均予想ではかなり均等です。アナリストの45%が強気、55%が弱気のシナリオです。D1インジケーターでは EUR/USD と全くおなじです: 100% すべてが赤である一方、オシレーターの25%は、このペアの売られ過ぎを示しています。 直近のサポートは8月23日の安値1.1716、それに続いて、1.1650、1.1535 、2020年3月の安値圏1.1400-1.1450。強気筋については、1.1755、1.1800、1.1865-1.1900、1.2000、 1.2050-1.2075、1.2160-1.2200、1.2275-1.2325 、1.2400-1.2430でレジスタンスに直面するでしょう。

    イギリスの経済統計に関しては、トレーダーは、8月29日(月)が銀行の休業日であることを知っておきましょう。重要なイベントとしては、9月1日(木)にイギリスの製造業PMIの発表があるので注目です。

USD/JPY: 日銀の政策に変更なし

  • USD/JPY は、週をとおして135.80-137.70での推移です。そして、5日間の結果としては、強気筋の僅差での勝利でした: 136.81で週明けが始まり、137.45でこのペアは終了しました。つまり、平均予想はかなり正しかったと言えます。前回、多くのアナリストたちが横ばいの支持だったことを思い出してください。

    ブルームバーグのエコノミストの最新調査では、3%のインフレ率が日本銀行(BOJ)の黒田東彦総裁に金融引き締めを迫ることはないと示しています。3%は1991年(増税の年を除く)以来の高水準ですが、米国の8.5% のインフレ率を大きく下回る水準です。そのうえ、予想では2022年末の3ヵ月にインフレ率は2.5%、来年末には1% 水準になる可能性があります。

    2023年4月の黒田東彦総裁退任後に金融政策変更の可能性については、本当に期待できません。まして、9月22日にある日本の規制当局の次回会合で利上げは期待すべきではありません。

    上記を踏まえて、大半のアナリスト(60%) はUSD/JPY が7月14日の高値139.40に向かう可能性があるとした見方をしています。アナリストの30% は円高で下落傾向、10% は様子見です。D1インジケーターではこれまでのペアを映し出した状態です: 100% 上向きですが、オシレーターの25% は買われ過ぎ圏内です。このペアのサポートは、137.00、136.70、136.15-136.30、135.50、 134.70、134.00-134.25、132.85-133.00、131.75-132.00、131.00。レジスタンスは、137.70、138.40、138.50-139.00、最終的には7月14日の高値139.38。強気筋の次のターゲットは140.00 と142.00。

    今週は、日本経済に関する重要な統計発表はなさそうです。

暗号資産:ダークグレーはカラー

  • 先週ですが、BTC/USD はジャクソンホールでのジェローム・パウエル議長の講演を控え、ほとんどの時間帯で$20,900-$21,800 での狭い取引幅でした。ビットコイン所有者の累積平均損益分岐点はこのゾーンです。しかし、リスク資産: 株式指数(S&P500、ダウ・ジョーンズ、ナスダック) と暗号資産の相場は8月26日の夕方に急落しました。この執筆時では、ビットコインは既にFRB議長のタカ派ムードを受けて、週安値の$20,534です。暗号資産市場の時価総額は、心理的に重要なレベルである1兆ドルを下回り、0.991兆ドル(1週間前は1.028兆ドル)です。Crypto Fear & Greed インデックスは、7日間で6ポイント下がり、33ポイントから27ポイントで非常に恐怖のゾーンです。この数字は、8月27‐28日の土日にさらに下がる可能性があります。

    夏の終わりの全体像はこのような感じです。7月にクジラ(10,000 BTC以上) とエビ (1 BTC以下) がビットコインを上昇させる投資力となっています。機関投資家がウォール街の様子に非常に左右されながら、クジラの中での先導力を担っていることは知られています。デジタル資産の機関運用は暗号資産ファンドによるものです。なお、統計から判断すると、これらのファンドへの投資流入は8月に入ると止まって、クジラは2週目にはBTCの売却に転じています: 流出額は約2100万ドル前後。

    しかし、Bakkt 暗号資産プラットフォームのギャビン・マイケルCEOによると、現状にかかわらず、ビットコインは数年で大きく上昇をすることを示しています。Bakkt は機関投資家向けのデジタルアセットと先物取引のサービスを提供しており、同氏によると、投資家たちは現在の状況を注視しており、市場への関心は高まっています。

    今後の価格上昇の主な予兆の1つは、ネットワーク・アクティビティの増加と新規アドレスになります。分析会社のグラスノードによるとビットコインのアクティビティは、現在、2018-2019年の弱気市場の終わりと同じ水準です。しかし、 “暗号資産の冬”の兆しにもかかわらず、ネットワークインジケーターはマクロ経済トレンドの反転のシグナルがないままです。アナリストたちは、ビットコインネットワークが上昇トレンドを継続するのに必要な暗号資産の需要が現在のところない状態であると指摘しています。 “最近の価格上昇は、特に投資家や投機家の間で目立つような新たなアクティブユーザーのとても大きな波を惹きつけることができなかった” とグラスノードは述べています。勢いの欠如はビットコインネットワークの手数料の落ち込みからも示されています。前述どおり、$1を下回っています。現在のBTCの取引の平均コストは $0.825前後であり、2020年の6月13日以来の安値水準です。これにもかかわらず、グラスノードはビットコインが将来的な上昇のために基盤をかためるには現在の水準であるとした見方をしています。

    CoinShares の最高戦略責任者であるメルテム・デミラーズ氏は “BTCが第3四半期の終わりまで上昇に貢献できそうな材料が見当たらない” とした見方をしています。これにもかかわらず、同氏の考えでは、 夏に“ビットコインに関する下落で多くの買いを見てきた”ことが、この資産を増やしていきたいという資金があることを示しています。

    メルテム・デミラーズ氏が注意深く楽観視しているとすれば、アナリストのジャスティン・ベネット氏は、かなり悲観的でBTCが再び売り圧力に直面する可能性があると考えています。ビットコインは、この数か月間強気な感じで維持していた斜めのサポートラインを下回りました。ベネット氏によると、コインの相場はこのような状況で過去2回30% 以上下落しています。

    アナリストは弱気ですが、短期的にはBTCはレジスタンスの$23,000に向かい上昇が予想されます。それから、$19,000への下落が予測されます。ベネット氏よれば、この水準でのビットコインの反応が年末までに決まることになります: “問題は、年内に反転の上値となるか、下値となるかです”。

    イーサリアム関して、メルテム・デミラーズ氏は投資家が市場の全体的な状況を無視して、ETH取引のPoSメカニズムへの移行をめぐって過大な方向へと向かっている考えています。そして、イーサリアムネットワークが統合されるメリットにもかかわらず、このことが十分な投資資金を惹きつけるか確かではありません: “暗号資産コミュニティでは供給を素早く減らし、需要を増加できる統合をかなり強調していますが、現実はむしろ平凡です。多額の新たな資金がETHに流れ込む可能性は低いと考えています。 統合は、噂で購入して、ニュースで売却するといったことがおこなわれていたため市場で起きるリスクがあります。どのようにリスクは起きるのでしょうか? ほとんどの場合、機関や取引を通じてですが、徹底した資産購入というよりはむしろオプションです” 。

    別の有名なストラテジスト、ベンジャミン・コーウェン氏はイーサリアムについて言及しています。同氏の考えでは、多くのマイナスのシナリオどおりなら、対数回帰帯はイーサリアムが­$400-$800の範囲に下落する可能性を示します。 同氏は、このような下落はイーサリアムの準備金を増やす絶好の機会であると述べています。同時に、アルトコインの上昇の可能性についても排除していません: “大きな問題もなくPoS の移行が実施されればく(ソフトウェアがいつでもスムーズに更新できるわけではないことを知っておきましょう)、ETH は急騰を示す可能性があり、FRBは金融政策を変更します” (念の為、イーサリアムネットワークの更新は9月15-20日に予定されいます。つまり、それほど、待つ必要はありません)。

 

NordFX Analytical Group

 

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